keronote’s blog

本の紹介、英語学習の記録を中心に、PC・スマホ関連、日々の生活のお役立ちネタも交えながら色々と書いていきます。少しでも楽しんでいただけたら、また何かの役に立てれば幸いです。

ぼくは明日、昨日のきみとデートする

 

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)

 

 

▶彼女が涙もろい理由は

 

ありえない話だと思うのだけれど、そこに違和感は全く感じられない。

事故などの不測の事態に合うことにより、愛する人との別れが突然訪れることは、恐らく私の想像力では計り知れないほど辛く、受け入れ難いものだと思う。

では、何日か後に必ず別れなくてはならないことが分かっているとき、一体どれくらい辛いのだろう。自分は、その辛さに耐えられるのだろうか。

そう考えさせられた小説だった。

 

物語の前半は、2人の出会いから、初デート、付き合うことになり、親密な仲になるまでが、とても丁寧に描かれていて、自分も当事者になったかのような気持ちになりドキドキした。

2人の過ごした日々、瞬間は本当に初々しくて素敵できらきらと輝いていて、互いに魅かれ合い思い合っていることが手に取るように分かった。このまま2人がうまくいきますようにと願わずにはいられなかった。

 

 面白い場所を目にしたら彼女に見せることを考え、おいしいものを食べたら彼女にも食べさせたいと願っている。

 どんな反応をするだろう。好きだろうか。喜んでくれるだろうか……。

 今までのように自分だけの「よかった」で終わらず、彼女と分かち合いたいと自然に望んでいる。

 

人を好きになるっていうのはこういうことなのだと、改めて気付かされ、私は温かい思いに包まれた。

 

でも主人公は、自分にとっての初めてが相手にとっての最後だと知った。

思い出が共有できないということの辛さはどれほどのものなのか!!

私には想像できないし、想像したくない。

それでもその辛さを受け入れ、2人は残り僅かな時間を大切に紡いでいく。

 

当たり前にしている思い出を共有するということ、そんな意識にも上らない普通のことがどれだけ大切なことなのかに気付かされた。

そして、一日一日を、この瞬間を大切に生きていきたいと思った。

 

溢れるほどの愛のぬくもりと、どうしようもない程の辛さが入り混じった、とても素敵な小説です。