タブーに踏み込む事故物件サイト大島てるから、情報公開について考えた。
2016年1月、竹内結子主演の映画『残穢 -住んではいけない部屋-』が公開されたことで注目されるようになった、「事故物件」という言葉があります。
これまで、その言葉の持つ意味は多くの人が知っているけれどタブー視されるもので、あくまで近所の人々による噂話レベルだった筈です。
その“噂話”の範囲を大きく広げてしまったのが、「大島てる」というサイトだと思います。
4月20日に配信された日経ビジネスオンラインの記事を見つけ、先の映画のこともあり少なからず「事故物件」に興味を持っていた私は、早速読んでみました。
その記事を読むと、事故物件を公開することで誰かが不利益を被るということはなく、結果的に借り手にとっても貸し手にとっても有益なのだというような主張がされていました。
またよく言われる“事故”の連鎖についても、その多くは説明可能な理由があるということです。でも………と続いたインタビューの終わり方は怪談話のようで、ちょっと面白いなと感じました。
【サイト大島てるとは】
「大島てる」を運営しているのは、
株式会社 大島てる
代表取締役会長 大島学
です。
私は最初勘違いしていたのですが、大島てるさんという名前の方が代表をされているわけではありません。(参照:ウィキペディア)
2005年開設のこのサイトのキモは、事故物件情報が地図上に一目で分かるようにあらわされていることです。情報も、住所・死因(事件の概要)・発生年と詳細で、自分が調べたい場所に事故物件がないかを簡単に探し出すことができます。
また、事故物件の投稿もできるので、サイトの情報はどんどん増え、開設当初は東京近辺に限定されていた情報が、日本全国はいうまでもなく、海外の物件まで載っているのには驚かされました。
しかし、このようなサイトにより不利益を被る人もいます。
それは、その物件を扱う不動産会社や大家であれば、なかなか入居者が決まらなかったり、入居者や近所の方々すると、普通の暮らしをしているのに、、噂を聞き付けて興味本位で見にくる人に奇異な目で見られたりするなどといったことです。
訴訟問題になった事もあるというのは、当然のことだろうと思います。
批判や非難のコメントは、サイト大島てるにも載せられていますが、現在更新されていない「Bloggerブログ」に多くありました。(もう一つのブログは現在も更新中)
それはもう怒り心頭というものから、このようなサイトの存在がまかり通っていることを嘆くといったものまで様々です。
そして倫理的な問題を説く一般の方でなく、実際にそのサイトがきっかけで不利益を被ったという方がやむにやまれず投稿したという感じでした。
先の日経ビジネスオンラインニュース同様、とても論理的にサイトの目的を説明されているのですが、はインパクト重視のためか、事故物件現場=怪奇現象スポットを連想させるような作りです。
その最たるものが事故物件場所を表す“炎のアイコン”です。
これがタブーという感情、現実感を薄れさせ、興味本位でサイトを訪れる人々を呼びこむのを助長していると思います。
私はまず、このような批判を大島てる側が削除していないことに驚き、また計算高い人だなと思いました。
「非難や批判は想定内。それは避けられないけど、この情報を求めている人がいるのだからそれを提供するのが使命だ。」という主張を揺るぎないものにするための策略めいたものを感じます。
【“需要があるから供給する”は正しいか】
でも、多くの批判・非難にも関わらず、このサイトは人気があるようです。
私も実際自宅近辺に事故物件はないかを探してしまいました。
実際、殺人事件があった現場が事故物件として「炎のアイコン」がついているのを確認しました。
このように事件として扱われたものはより簡単に情報が得られるだろうとはいえ、こんな片田舎の情報まで網羅して公開されているという事実には、うすら寒さを感じます。
投稿型サイトの拡散性の高さを顕著に表しています。
自分の知らないところで自分または自分に少しでも関わりのあるものがネット上に公開されているのは、知らなければ問題ないのかもしれませんが、気持ちの悪いものです…。
でも、こういった噂話的なものを面白いと思う自分がいるのは間違いないんですよね…。
多くの人達がそう思うからこそ、夏になると怪談話がもてはやされたり、軽いノリで心霊スポットを訪れたりということが昔から繰り返されてきたのだと思います。
ただ、情報があまりに詳しくリアルタイムであること、いつでも誰でもどこにいても知ることができるようになってしまったことが、ネットが普及する以前とは異なり、問題を大きくしてしまっているように感じます。
以上、事故物件情報の公開について考えたことでした。