keronote’s blog

本の紹介、英語学習の記録を中心に、PC・スマホ関連、日々の生活のお役立ちネタも交えながら色々と書いていきます。少しでも楽しんでいただけたら、また何かの役に立てれば幸いです。

『ちくま日本文学003 宮沢賢治』より、『グスコーブドリの伝記』を読んで

最近本を読んでいないなと思い、本棚を探すと、5年前に買ったこの本を見つけた。

たまには日本文学も読んでみたいと思って買ったものだ。

有名な『銀河鉄道の夜』は読んだことがないし、『風の又三郎』は読んだことがあるけど、内容はまったく覚えていない。

 

大学の時に教養で講義を聞いたことがあるが、その先生はとにかく「賢治大好き」な人だった。

賢治を知らないものは人間ではないと思っているかのようなオーラを出していたし、「みんな賢治を知っている」が前提だったので、講義はちんぷんかんぷんだった。

でも、多分レポートを提出し合格をもらったとは思う。

 

とにかく、私が宮沢賢治と聞いて一番に思い出すのは有名な本のタイトルではなく、今ではもう名前を忘れてしまった、この「賢治大好き先生」なのだ。

なので、この記事内では私も宮沢賢治のことを賢治と呼ばせてもらうことにする。

 

さて、この文庫本には、17の短編と10の詩、2つの歌曲が収められている。

最初、小学校か中学校で習ったことのある『やまなし』を読もうかと思ったが、パッと開いたページが『グスコーブドリの伝記』だったので、これを読むことにした。

 

この話は数年前にアニメ映画化されていたのだが、読み終わった後でそれを知った。

 

この話に限らないのだけれど、賢治の小説に出てくる登場人物の名前は、不思議な響きをもっている。無国籍で幻想的だ。

ここに出てくるイーハトーブという地名については、ロシア辺りに実際にある都市の名前だとばかり思っていた。

 

描写が細かく臨場感があるのに、非現実さもまとっている。

夢の中にいるような不思議な感覚を抱きながら読んだ。

賢治はSF作家なのかと思ったが、後で井上ひさしによるあとがきを読んで、童話作家であったことに気づいた。

童話を読むことが最近なくなっていたので、非現実的なストーリー=SFと思い込んでしまっていたのだ。

 

そして、賢治が農業に対して非常に深い知識と愛情を持っているということを、作品とあとがきから初めて知った。

 

短編ながら、登場人物の人物像がありありと浮かんできた。暗さの漂うストーリーながら、言葉がきれいであることが不思議だった。まさに夢物語の中を歩いているうちに、気がつけばその物語は終わってしまっていたのだった。

 

この不思議な感覚は、多分若い時の自分には受け入れられなかっただろうと思う。

今面白いと感じたストーリー、綺麗だと感じた言葉は、意味が分からないものと捉え、短編ながら読み切ることは難しかったのではないか。

 

やっと日本文学を味わえるようになった自分に嬉しさを感じた。

少しずつ賢治の他の作品も読んでみようと思う。

  

宮沢賢治 (ちくま日本文学全集)

宮沢賢治 (ちくま日本文学全集)