keronote’s blog

本の紹介、英語学習の記録を中心に、PC・スマホ関連、日々の生活のお役立ちネタも交えながら色々と書いていきます。少しでも楽しんでいただけたら、また何かの役に立てれば幸いです。

統合失調症がやってきた

 

統合失調症がやってきた

統合失調症がやってきた

 

 そういえば松本ハウスって最近見てなかったな~と思い何となく手にとった本です。

ここにはお笑い芸人ハウス加賀谷松本ハウス)さんの半生が綴られています。

人気絶頂期の当時、この人ちょっとぶっ飛んでるなとは思いましたが嫌悪感を抱くようなことはありませんでした。
まして、統合失調症という障害と戦っているなどとは思いもよりませんでした。
たぶん知っていたとしても、面白ければそれで別に問題に感じることはなかったでしょう。
常に人前に出て観客の反応をダイレクトに感じるという職業柄、精神的なダメージを被ることは少なからずあるだろうくらいにしか感じていませんでした。

しかし、彼の統合失調症との戦いは物心がついた頃から徐々に始まっていきます。
親の期待に応えたい親の喜ぶ顔が見たいというごく普通の思いが、過度の親からの干渉によって少しずつ形をゆがめ、発散できない自分の思いが自分自身を傷つけていったのです。

 

 

その症状は成長するに従って益々ひどくなり、幻聴が聞こえるようになったことで周りから距離をおくようになり無気力になっていきます。
そして当時は統合失調症という言葉もなく(2002年までは精神分裂病と呼ばれていた)、今でも十分と呼べるかどうかはわかりませんが、こころの病に対する社会の認識と理解が今ほど浸透しておらず、医師も周囲の人々からの理解やサポートを得られない、どうするべきなのかがはっきりしないということで、辛い思いをされたようです。

 

そのような状況の中でお笑い芸人になりたい!という夢を抱き、そこから本当に芸人になってしまう行動力に驚きました。
しかも誰かに頼るのではなく、どうすれば芸人になれるかを自ら考え、行動するという大胆さと自分は絶対に夢を叶えるんだという迷いのなさはすがすがしさを感じ、「よし行け加賀谷!」と応援したくなります。

 

そして折からのお笑いブームの波にのり、一躍売れっ子となります。
しかし売れっ子となり多忙を極める中で少しずつ歯車が狂い始めていくのです。
処方された薬をその時の状態に応じて自分で飲んだり飲まなかったりしていくことで新たに幻覚の症状が現れることとなり、朝も起きれなかったり再び無気力に陥るようにもなり、悩んだあげくコンビは解散。芸人を廃業して入院生活を送ることとなります。

 

そこで集中して治療を受けたことで精神的に落ち着きを取り戻し、落ち着いて物事を考えることができるようになります。
退院後もすぐには社会復帰とはいきませんでしたが、自分に合った種類の投薬を受けられたことにより無気力の状態から脱し、いくつかのアルバイト経験などののち、お笑い芸人に復帰することとなります。

 

個人差はあると思いますが、心の病というものはどれも継続的な薬の服用だけでなく、周囲のサポートが不可欠であると感じました。言い換えれば周囲の理解とサポートがあれば症状がよくなる、社会で活躍できるチャンスは増えるということです。


私はちょっとうまくいかないことがあったとき、そこからどんどん良くないこと連想していき、考えが負のスパイラルに陥ってしまいがちです。自分がダメな人間でであることの理由を自ら探し積み重ねていって身動きがとれない状態になっていきます。

しかし著者は極限の状態を経験したにも関わらずこう述べています。

 

 

❝人を怨む、世間を呪う「負の力」で生きてきたぼくは、「負」の恩恵しか授からなかった。~中略~ぼくは自分を恥じて、これからは「正の力」で生きていこう、と心を改めた。一人で生きているわけじゃない。人に感謝し、人に喜んでもらおう。❞


❝人生は謳歌すべきだとぼくは思う。自分がやりたいようにトライしてみる。失敗は当たり前だし、くよくよもするが、諦めたらそこですべてが終わってしまう。怖くてなかなか踏ん切りがつかないけど、できることはできる範囲でやっておこう。❞


あとがきより~

❝社会の偏見は根深く、なかなかなくならない。だけど、ぼくは、偏見がなくなることを期待するより、自分がどう生きるかが大事だと考えてるんだ。~略~みんなありがとうね。感謝しています。❞

 


松本ハウスは現在お笑い活動だけでなく、この本を題材にした講演活動もしています。
この本の出版と講演活動により、統合失調症についての理解はこれから進んでいくと思います。
それはもちろん「いいこと」ですが、私はこの本から感謝の気持ちを忘れない、前向きに生きるという姿勢を教えてもらい目の前が明るく開けたような気持ちを抱くことができました。
加賀谷さん、ありがとう。感謝しています。