君の膵臓をたべたい
※ネタバレしてしまう部分があるかもしれません。ご了承ください。
知人からタイトルを聞いてギョッとする。
最初、何の知識も持たずこの本のタイトルだけ聞いたので、一体どのようなジャンルの小説なのかもわからなかった。
でも、どうやら青春小説なのだとわかって、
「死ぬほど君が好き」
と言うときと同じようなものかと考え、彼女(彼)の膵臓を食べてしまいたいほど好きというのだろうと思った。
後にそれは合っていなくもないが、そんな一言でくくってしまえるほど単純な感情ではないことが分かった。
彼女、山内桜良(さくら)と「僕」は、高2の4月に出会う。
彼女は快活でクラスの人気者。
僕はクラスで目立たない存在で友達もいない。
でも、自分の意志でそうありたいと思っている。人間関係は煩わしい。
そんな、クラスメイトという以外接点のない2人は、秘密を共有することでつながった。
人間関係も、食べ物の好みも、考え方もまるで正反対の2人。
正反対ということで、それが魅力的に見えることもあるだろうし、反対に全く眼中に入らなかったり敬遠したりすることもあるだろう。
自分が考えていることは素直に口に出し、自分がしたいと思うことはすぐに行動に移す彼女。
それにひきかえ、引きこもりがちな「僕」。
人に興味がない、誰かに興味を持たれるような人間でもないと考えていた僕は、彼女に翻弄されながらも、人のこころというもの、人間関係について少しずつ学んでいく。
そして、「君になりたい」という彼女への気持ちに気付いたとき、彼女はこの世界にいない。
“人を認められる人間に、人に認められる人間に。
人を愛せる人間に、人に愛される人間に。“
“僕はどうかすれば君になれただろうか。
僕はどうかすれば君になれるのだろうか。“
彼女への思いを伝えられなかったということの苦しさは、想像するに余りある。
彼女は本当に多くの、大切なことを知っている。
それは誰かから学んだからではなく、また病気を患ったことがきっかけで生まれた感情でもない。
彼女自身が人間関係を育む中で自然に備わってきたものなのだと確信した。
彼女は、2人の出会いは偶然でも運命でもない。
今まで選択してきた多くのことが、それへとつながった。
自分の意志で出会ったのだと言う。
何かうまくいかないことがあると、こんな筈じゃなかったという思考に陥ることがある。
誰かのせいや、何かのせいにしてしまうことがある。
でも、うまくいったときもうまくいかなかったときも、それを選択したのは結局自分なのだ。
私は「僕」に共通する部分を見つけ、共感した。
その彼は、勇気を出して彼女からの宿題を実行する。
私も彼女から多くのことを学んだが、それを実行できずにいる。
彼女みたいになりたいと思いながら、自分は自分なのだという気持ちを捨てきれない。
「僕」が自分でつかみ取った爽やかな友情のように、清々しい人間になりたい。
人を愛せる人間になりたい。
その為の選択をするのは自分自身だ。