とつぜん会社が英語になったら… 「まっとうな英語」のすすめ
私が勤めている会社は、天地がひっくり返ってもこのような事態にはならないでしょう。
けれど、このような危機(?)にさらされている会社はきっと増えているのだろうと思います。
会社という形態でなくても、職場で英語が半ば公用化する事象は、2020年の東京オリンピックが近づくにつれ増えていくに違いありません。
少なくとも、今よりずっと「英語」が身近になるんじゃないかと思うのです。
首都圏から離れた私の住む地域では、オリンピックの影響はないかもしれません。
でも、増加している外国人観光客の人とコミュニケーションをとりたいという気持ちは、最近高まっています。
そんな気持ちから、生活の大部分を占める仕事の時間が、何の心構えもなく英語になったとき、どういう対策を取ればいいのか知りたいと思い、この本を手に取りました。
しかし、私の想像と違い、この本はそういった企業で実際に働いた人の体験談が載っているわけではなく、肩透かしをくらいました。
ここに書かれているのは、会社の公用語が英語になるとはどういうことなのか、それに対してどう対策をとるべきか、どういう考え方を身につけるべきかということが書かれています。
英語学習法が書かれていると思って読むと、ガッカリしてしまうでしょう。
■英語とはどのような言語なのか
その代わり、多くの発見もありました。
まず、「通じる英語」というのは、発音だけ気を付ければいいというわけではないということです。
他にリズム・アクセント・イントネーションにも気を配らなければ、ネイティブに近づくことはできません。
次に、日本語はスタッカートで話すという事実です。
だから何なの?と言われればそれまでですが、確かに日本語は一語一語を切り取っても不自然でないのに比べ、ネイティブの人が話す英語は流れるようです。
そしてその流麗さが、聞き取りを難しくしているのではないでしょうか。
英語の特徴として他には、
・論理的である
・具体から抽象へ向かっていく
・分析的である
ということなどが挙げられています。
論理的さを表す例として、この本を通して書かれているのは、
“this”と“that”と、“it”の違いについてです。
「何だ文法の話か…、苦手なんだよな~。」と思い、読まないのは損です。
ここに書かれているのは用法であると同時に、なぜそのような使い方をするのか、英語の考え方の根本なのです。
考え方を知るということで相手のことを理解しやすくなるし、英語と日本との違いを正しく知ることで木を付けるべき点が明らかになり、学習しやすくなると感じました。
■日本語はあいまい
さて上記の単語の意味は、日本語では順に、“これ”、“あれ”、“それ”でしかないのですが、
英語ではこの使い分けに非常に深い意味を持っていることがわかります。
それはつまり、英語は分析的であるということです。
分析的=厳密的ともいえます。
曖昧さが良しとされる日本語とは根本からかけ離れています。
イメージが好まれ分析しようとしない日本文化は、日常が芸術的と言われる所以のようです。
私もどっぷりと日本的な思考につかっているので、これまで英語を学んできて、曖昧な日本語を英語に訳すのに苦労しています。
それはつまり、まっとうな英語が身についていない証拠だともいえます。
まっとうな英語を話すには、感覚的なものに頼っていてはダメです。
単に意味が通じるだけではなく、そこに教養が感じられるものでなければ、相手を不快にさせることになりかねません。
単語を並べただけの片言英語ではダメだということです。
まっとうな英語を身につけるために海外へ留学する必要はないようですが、冒頭で述べたように、具体的な学習法は書かれていません。
ただ実践として、自分の現場の単語を書き出し、現場の作業を書き出してスタンダードな英語に転換し、自分用のマニュアル作りをするところから始めることを勧めています。
英語と日本語が想像以上に異なる言語だと知って、改めて英語を習得することの難しさを知ると同時に、だからこそお互い相手の文化に魅かれるのかもしれないと、ちょっと愉快な気持ちにもなりました。
1つの語句が持つ意味を、もっと考えながら学習していきたいと思える本です
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