お菓子作りが好きな私が、バター不足から考えた農業問題
バター不足が言われるようになって、10年近く経ちます。
私は製菓材料をネットショップ「クオカ」で購入することが多いのですが、私が最も頻繁に菓子作りをしていた10年前にも、業務用のお買い得バターは数量制限がされていました。
この店では450g入りの無塩バターが800円程度で購入でき、スーパーで買うより圧倒的に安いので、数量制限は仕方ないと思い、在庫があるときにはすかさず注文するということをしていました。
しかし、数年前から続いているバター不足はさらに深刻度を増しています。
お買い得品に限らず、また有塩無塩に限らず、ちょっと高めのスーパーのバターすら、なかなか店頭に並ばない事態となってしまったのです。
現在は少し落ち着いたようで、バターの棚に商品が一つも並んでいないということはありませんが、「バターの購入はお一人様1個まででお願いいたします」といった表示は変わらず掲げられています。
【なぜ、バター不足は起こるのか】
当然起こってくるのは、「バターを増産しろ」という声なのですが、
これに対する回答は、牛乳の需要が減っているため、生産調整(つまり乳牛を殺処分するということ)をしているので、急激な増産は難しいというものでした。
これに対して私が疑問に思ったことがあります。
それは、牛乳の需要が減ってきているのも、食生活が洋風化してきて食事や菓子類にバターを使ったものが増えているのも素人目に見ても明らかです。それなのに深刻なバター不足が問題になる前に、何らかの対策をとることはできなかったのだろうかということです。
「国内で賄えないのなら、海外から輸入すればいいじゃないか。
TPP交渉もまとまったことだし。」
という意見もあると思います。
私もそう考えました。
しかし、この東洋経済オンラインの記事によると、そう簡単な話ではないことがわかります。
しかもチーズはTPPの対象ですが、バター+脱脂粉乳=生乳 となるので、バターは対象品目とならないそうです。
まだ先の話ですが、クリスマスやバレンタインの時期、製菓店・ケーキ店は稼ぎどきです。
それなのにバターがない。何とかして仕入れたバターがあまりに高価であっては、商売になりません。売れば売るほど赤字が膨らんでいくのです。
私は製菓店・ケーキ店の内情に詳しいわけではありませんが、テレビのインタビューでこのような声を聞いたので、バター不足に悩まされているところは少なくない筈です。
個人的には、暖かくなってくるとあまりバターを使った菓子は作らないのですが、冬の供給量を左右するのはやはりそれ以前の政策によると思うので、今後も注意深く動向を見守っていきたいです。
【酪農・農業の抱える根幹的な問題】
酪農も農業も、自然との闘いである部分が大きく、気力・体力が非常に必要とされる職業だと思います。
単に食糧の生産だけでなく、国土を守るという重要な意味合いをもっていることにも注目しなければなりません。
それが故なのか、政府・農協の政策や思惑が複雑に絡んでくるという難しさがあるのだということをしみじみと感じずにはいられません。
生産物の価格維持は、生産者の生活を守るため必要なことは明らかです。
でも日本では、ダイレクトに価格が上がる=所得の増加 とは成り得ないことが、上記の東洋経済オンラインの記事からわかります。
日本の流通システムはどの業界も本当に複雑だと思います。
生産者も消費者も共に満足できる、わかりやすい仕組みができることを一消費者として望んでいます。
酪農家&農家の実情について知りたいという方は、
荒川弘氏の『百姓貴族』1~4巻がお薦めです。(現在も連載中)
実話ながら、かなりぶっ飛んだ登場人物たち。
仕事や生活を面白おかしく描きながら、酪農家&農家の抱える問題を分かりやすく、また時には怒りを露わに主張しています。
ただ、新刊の発売が約2年おきなのが、ファンにはもどかしい限りです…(´Д`)