『0円で空き家をもらって」東京脱出!』
■空き家問題と移住生活
この本は、熊本は阿蘇出身、東京在住の漫画家が、友人のすすめで広島県尾道市に移住するというコミックエッセイです。
コミックエッセイ好きの私ですが、はっきり言って絵は私好みではありませんでした。
でも、自宅から30分ほどのところにある尾道のことが書かれてあることと、県外出身の人(私もそうですが)から見た尾道(広島)とはどんなところなのかが気になったので、読んでみることにしました。
広島に住んでいるとわかるのですが、折に触れニュースになるのは、尾道の空き家問題です。
全国的にも有名な観光地で、海沿いの平地にはおしゃれなお店が沢山軒を並べています。
狭くて急な山の斜面(山手地区)にも、古民家を再利用したカフェやギャラリーなどがありますが、それはほんの一部にすぎないようで、まだまだ空き家は多いようです。
このマンガを読むことで、空き家問題の現実を日常生活のレベルでどういうことなのかを具体的に知ることができます。
その感想は人それぞれと思いますが、私は最初、
「タダより高いものはない。」
という感想を抱きました。
「駅に近い」、「観光地に近く面白いお店がいっぱいある」といった利点はあるけれど、やはり日常生活を送るためには、車が入れないのは不便だし、古民家ならではの苦労を見ると、アパート暮らしのほうがいいのでは…と思ってしまいます。
ただ、人と接するのが好きという人なら苦にならないかもしれません。
地元の人や移住仲間たち(結構いるらしいです)の力を借りながら、自分たちの住まいを作っていくのは想像以上に大変でしょうが、ものづくりが好きな人ならむしろ楽しめるのではないでしょうか。
私は骨太な性格でもなければ、人と話をするのが嫌いではないけれどあまりうまくない性質なので、こういう本を読んで妄想しているのが楽しいのです。
■不便を楽しむ
でも、そんな私のマイナス思考を吹き飛ばしてしまうくらい、つるさん(著者)たちの活動はぶっ飛んでいました。
やろう!と声をあげたものはすぐ取りかかり、実現させる。
やったことがないから…という人は、この漫画には1人も登場しないのですΣ(゚Д゚)
むしろ、「何やる?次なにやる?」と手ぐすね引いている状態で、やってみないことこそがあり得ないことのようです(・´з`・)
あまりのアクの強さに分けもなくドキドキしつつも、どんどん引き込まれて行きました。
こういう自分で考えたものを目に見える形にしていくという生活に憧れている人は、ごまんといると思います。
ではそれを実現できる人は…というと、自分1人の力だけではどうにもならないこともあると思うのです。
それは、「縁」かなと。
気がつけばあまり好きでなかった絵も、細かいディテールまで書きこまれた私好みの絵だと感じるまでになっていたし、流れに身を任せながらも、一つの事に熱中し、情熱を注ぐ姿に清々しさを感じました。
さらに小学校へけん玉を教えに行く件や、ワークショップで漫画の描き方を教えるなど、自然な形で地域の人々と交流を深めていくところは、素直に感動です。
自分のやりたいことをやり、また新たな可能性を探りつつも、自分たちだけのコミュニティーに閉じこもることなく、外に向かって発信し、来るものは受け入れる。
ここには、これ以上ない理想のライフスタイルが繰り広げられています。
実際はある程度の方向性が定まるまでは、描かれている以上に困難なことがあったと思います。
マイペースで日々の暮らしを送りたいと思う私には、「お互いさま」の気持ちで助け合う生活は、見えない足かせのように感じて苦手です。
それでも、こういった活動に参加してみるのもいいなと少しだけ思えるようになったのは、
行動力はあるけれど、そこはかとなく漂う著者の緩さと(決してモチベーションが低いわけではありません)、奥さまの何でも受け入れちゃう、懐のだだっ広さによるところが大きいのだろうと自己分析してみました。
■とりあえず動く!
著者も言っていますが、自分の居場所について悩んでいる人がいたら、どこでも生活はしていけるから、飛び出してみよう!と声をかけたいです。
そしてそっとこの本を渡すのです( *´艸`) (ちょっと迷惑かもしれませんが…)
この本を読んだ人はたちどころに移住を決意し…
とはいかないと思いますが、私のように固定観念に縛られている自分から脱却したいと考えているような人は、思い切って一歩踏み出してみるのもいいかもしれません。
そして広島弁では物足りないあなた!
備後弁(びんごべん)丸出しのセリフ盛りだくさんの登場人物たちのセリフも面白いですよ~(・´з`・)